20.泌尿器系合併症

はじめに

古典的な先天性角化不全症(DC)患者では、いくつかの泌尿器系の合併症が報告されているが、その発生率や他の関連するテロメア生物学的障害(TBDs)にどの程度影響するかについてのデータは少ない。英国を拠点とするDC登録サイトの報告では、DCの男性の5%が尿道狭窄および/または包茎を有していることが判明しました[1]。国立がん研究所(アメリカ)で最近行われた男性DC患者の分析では、10.5%が尿道狭窄の既往があった[2]。DC患者の腎臓の異常に関する症例報告がいくつかあるが、NCI(アメリカ国立がん研究所)に登録されたDC症例の中では、DCに関連する明確な腎臓病は認められなかった[2, 3, 4]。DC患者における泌尿器系合併症の管理は、患者の症状に基づいた詳細な臨床評価から始め、必要に応じて専門医に相談する必要があります。

男性

尿路狭窄

尿道狭窄は、最もよく男性に発生します。この尿道の狭窄は、尿道に沿った任意の部位で発生します。尿路狭窄のある成人男性及び男児は、典型的に緊張性排尿、不完全膀胱排出、尿流の狭さや弱さなどを含む排尿障害を症状とします。

患者は、血尿や頻回の尿路感染症、精巣上体炎または尿路結石の既往がある可能性があります。 [6, 7]。尿道狭窄の診断は、泌尿器科医と相談の上行うべきである [5, 8]。逆行性尿道造影検査画像検査などの画像検査や排尿性膀胱尿道造影検査または膀胱鏡検査は、狭窄の程度や位置を特定するために使用されることがあります。

男性におけるDC/TBDsに伴う尿道狭窄の病因は不明ですが、それは個々の細胞の複製能力の一部が限られていることが原因であると考えられています。

DCではない患者で尿道狭窄を発症したケースでは、正常な尿道の偽層状柱状上皮は扁平上皮化生細胞に置き換わります。

DC/TBDsにおいても同様のメカニズムが関与している可能性がありますが、これについてはまだ研究されていません。

治療は、症状の程度と狭窄の部位によって決定されます [5, 9,10] 。また、複雑な尿道疾患の治療経験を有する泌尿器科医によって治療方針を管理する必要があります。

比較的短い狭窄に対しては尿道拡張術を行うことができます。

尿道形成術は前部尿道の狭窄症の治療に用いられ、一方、尿道口切開術は尿道口狭窄症に対して推奨される治療法です。

包茎

フィモシス(包皮炎)は、陰茎包皮が後退できない比較的よくある状態です。

陰茎の亀頭包皮は通常、乳児では後退しないが、小児期から徐々に後退します [11]。包皮の瘢痕化は包茎を引き起こす可能性があり、これによって排尿困難、亀頭炎、または尿路感染症を引き起こす可能性があります。外用コルチコステロイドは局所的な炎症に対して使用されることがあります。抗生物質が必要となる場合があります。

DC/TBDs患者が、同年代の他の人に比べて包茎の頻度が高いかは不明です。

性腺機能低下症

性腺機能低下症(テストステロンの分泌量が減少する状態)は、DC/TBDs患者の一部で報告されています。この点については第22章の内分泌・骨格合併症でさらに詳しく説明されています。

女性

女性DC患者において、小陰唇癒着、処女膜狭窄、および尿道狭窄の事例が報告されています。DC/TBDにおけるこれらの合併症の発生率は不明です。ただし、これらの症状は、DC/TBDsを有する女性や女児で、頻回の尿路感染症、排尿困難、または異常な月経出血を呈する場合に考慮すべきです。DC/TBDsを有する一部の女性において、陰唇白板症が報告されていますが、これが癒着や狭窄に寄与するメカニズムは不明です。女性または女児のDC患者においてこれらの合併症が疑われる場合は、産婦人科医および/または泌尿器科医に相談する必要があります。

さらに詳しい情報は21章の婦人科・産科をご覧ください。

参考文献

  1. Dokal I. Dyskeratosis congenita in all its forms. Br J Haematol .2000;110(4):768-779.
  2. Niewisch MR, Giri N, McReynolds LJ, et al. Disease Progression and Clinical Outcomes in Telomere Biology Disorders. Blood . 2021;blood.2021013523.
  3. Balci S, Engiz O, Erekul A, Gozdasoglu S, Vulliamy T. An atypical form of dyskeratosis congenita with renal agenesis and no mutation in DKC1, TERC and TERT genes. J Eur Acad Dermatol Venereol . 2009;23(5):607-608.
  4. Kamel A, Sayari T, Jellouli M, Hammi Y, Louzir RG, Gargah T. Diffuse Mesangial Sclerosis in a Child With Dyskeratosis Congenita Leading to End-stage Renal Disease. Iran J Kidney Dis . 2016;10(6):416-418.
  5. Hampson LA, McAninch JW, Breyer BN. Male urethral strictures and their management. Nat Rev Urol . 2014;11(1):43-50.
  6. Kaplan GW, Brock JW, Fisch M, Koraitim MM, Snyder HM. SIU/ICUD Consultation on Urethral Strictures: Urethral strictures in children. Urology . 2014;83(3 Suppl):S71-73.
  7. Latini JM, McAninch JW, Brandes SB, Chung JY, Rosenstein D. SIU/ICUD Consultation On Urethral Strictures: Epidemiology, etiology, anatomy, and
    nomenclature of urethral stenoses, strictures, and pelvic fracture urethral disruption injuries. Urology . 2014;83(3 Suppl):S1-7.
  8. Angermeier KW, Rourke KF, Dubey D, Forsyth RJ, Gonzalez CM. SIU/ICUD Consultation on Urethral Strictures: Evaluation and follow-up. Urology . 2014;83(3 Suppl):S8-17.
  9. Kaplan GW. Urethral strictures in children. Curr Opin Urol . 2012;22(6):462-466.
  10. Wessells H, Angermeier KW, Elliott S, et al. Male Urethral Stricture: American Urological Association Guideline. J Urol . 2017;197(1):182-190.
  11. Drake T, Rustom J, Davies M. Phimosis in childhood. BMJ . 2013;346:f3678. 312 Telomere Biology Disorders Diagnosis and Management Guidelines, 2nd Edition, available at teamtelomere.org

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