骨髄不全症の概要
骨髄不全(BMF)は、テロメア生物学的障害(TBD)、特に古典的先天性角化不全症(DC)によく見られる合併症です。DC患者の80%は30歳までに骨髄不全症を発症します [1, 2]。TBDと診断された人の多くは、全血球数(CBC)にある程度の異常があり、その程度は、巨赤芽球症(大きな赤血球のために年齢に対して高い平均赤血球容積[MCV]を示す)などの比較的軽度な所見から、一つまたは複数の血球系統の減少を示す軽度の無症候性貧血、さらに重症再生不良性貧血まで多岐にわたります。
一部の患者では、骨髄造血細胞に進行性の異常(異形成)が生じ、その後、骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)に進展することがあります[3-5]。
骨髄不全症の発症時期は個人差が大きいです。重症のDCの乳児や幼児は、DCの他の徴候が現れる前でも、早い時期に進行性骨髄不全を呈することがありますが、TBD(特にTERCまたはTERTの変異)の成人患者は、かなり遅い時期に血球異常を発症するか、全く発症しないこともあります。最初に現れる血球減少症は、通常、血小板数の減少であり貧血または好中球減少症がそれに続きます[6、7]
骨髄不全症の定義
骨髄が十分な量の正常な血球を産生できないために、血球数が年齢相応の正常値を持続的に下回る場合に骨髄不全症と診断されます。感染症、薬剤、末梢血球破壊、栄養不足など、血球数減少の他の原因をまず除外する必要があります。
DCおよびTBDにおける骨髄不全の分類は、ファンコニー貧血の分類と同様であり、現在は、ファンコニー貧血の骨髄不全の管理のために作成されたコンセンサスガイドラインに基づいています[8]。赤血球または血小板のいずれかを輸血に依存している患者は、一般的に重症とみなされます。
Camittaらによって提案された(免疫性)再生不良性貧血の診断基準は、重症骨髄不全を示す場合にも適用でき、次のように定義されます。:絶対好中球数<500/mm3、血小板数<2万/mm3、絶対網赤血球数<6万/mm3。 一般的に、TBDの骨髄不全の程度は再生不良性貧血のガイドラインを参考にしています。これにより、軽度、中等度、最重症と分けられています。
TBDが疑われる、または診断された患者では基本の血液学的状態(骨髄不全、骨髄異形成、または核型異常/染色体異常が存在するかどうか)を判断するために全血球数検査および骨髄検査を実施する必要があります。
骨髄検査は、生検と穿刺の両方が必要です。骨髄生検は骨髄の構造と細胞を評価するものであり、骨髄穿刺は骨髄内の細胞が形態的に正常か異常かを判断するものです。骨髄穿刺吸引液のサンプルは、G分染法による細胞遺伝学的評価(染色体検査)と、MDSに関連する一般的なクローン性細胞遺伝学的異常を調べるためのFISH検査においても使用することを推奨します。骨髄系癌遺伝子変異を調べる次世代シーケンサーを使用することも可能ですが、白血病やMDSを発症していない場合の意義はまだ不明です。TBD患者(および他の遺伝性骨髄不全症患者)には、ある程度の細胞形態異常が一般的であるため、赤血球系、骨髄系、巨核球系における軽度の形態異常をMDSと誤認してはなりません。TBD における MDS 診断には、骨髄不全症候群に精通した血液病理医による骨髄標本の評価や、更に継続した慎重な骨髄評価が必要となります。
骨髄不全のモニタリング
定期的な血球数および骨髄のモニタリングは、適時適切な治療介入を開始できるよう、疾患の進行を評価するために重要です。
特に細胞減少や骨髄不全がない場合の非DC型TBD患者は、定期的な骨髄検査は必要ないかもしれません。ガイドラインは、臨床所見や症状の不均一性、病気の進行、治療、関連する合併症に関する新しいデータが得られた場合に変更される可能性があります。TBD 患者に必要な骨髄検査の頻度に関する絶対マニュアルはなく、臨床背景や医師の判断、患者の選択によって決められています。しかし、ガイドラインは血液専門医によって修正され、臨床的に必要とされる個々の患者のニーズに合わせて調整されるかもしれません。血液学的悪性腫瘍の家族歴、化学療法や放射線への曝露、または高リスクの生殖細胞変異を持つ患者は、より詳細なフォローアップが必要かもしれません。
以下の症状の患者
①正常血球数及び遺伝学的異常無しの場合
・6-12ヶ月に1度の全血球数検査
・骨髄吸引/生検と細胞遺伝学的検査は、初回検査で1回実施する必要がありますが、その際に骨髄に異常がなく、全血球数 が正常であれば、細胞減少が生じた場合のみ骨髄を再 採取するのが妥当です。
②安定しているが軽度の血球減少があり、遺伝学的異常がない場合
・3-4ヶ月に1度の全血球数検査
・骨髄吸引/生検と細胞遺伝学的検査は、初回検査時に実施する必要があります。臨床的背景、医師の判断、患者の選択により、骨髄は定期的な間隔(1~3年)で実施することも、血球数の低下がない場合に限りこれより延期することも可能です。
③血球値に変動がある場合:より頻繁に全血球数及び骨髄評価が必要
・感染症に罹患すると、骨髄予備能が低下するため、血球数が減少することがあります。ほとんどの場合、血球数は回復後数週間で、患者さんのベースラインのレベルまで戻ります。
・明らかな原因なく血球数が徐々に減少している患者には、より頻度の高い全血球数検査及び骨髄の形態学的検査(骨髄生検等)や遺伝学的検査を行うことが必要です。骨髄不全 の進行、または MDS や AML の発症に対しては、適切な介入計画を立てる必要があります。
④クローン性細胞遺伝学的異常がある場合:細胞遺伝学的クローンの存在自体(MDSの形態学的証拠なし)は、必ずしもMDSの診断を示すものではありません。TBDの経験では、MDSや白血病に進行することなく数年間(10~15年以上)持続しているクローン性細胞遺伝学的変化を持つ患者もいます。しかし、MDSに関連する染色体異常は定期的なモニタリングをし、モノソミー7のような高リスクの変化は造血細胞移植(HCT)を紹介する必要があります。
クローン性細胞遺伝学的異常に対する一般的な推奨事項:
・血球数の安定性に基づき、1-2ヶ月または2-3ヶ月ごとに全血球数検査を行う。
・骨髄検査(細胞遺伝学検査および FISH 検査)を 4~6 ヶ月ごとに最低 2~3 回行う。
血球数が安定し、骨髄クローンが進行せず、骨髄形態がMDSと診断されない場合は、年1回の骨髄検査に戻しても問題ない場合があります。
細胞遺伝学的異常を伴うMDSに対するアドバイス
・MDS に関連した細胞遺伝学的異常が検出された場合、患者は MDS や白血病に急速に進行する可能性があるため、造血細胞移植 の適切な計画を立てる必要があります。7 番染色体異常(特にモノソミー 7)は、骨髄不全症 において白血病進行の高リスクおよび全生存率の低 下と関連しており、この状況では 造血細胞移植 のための緊急評価を行う必要があります。
・5 番染色体欠損、8 番染色体トリソミー、11q23 転座、20q、3q 異常などの他のクローン性細胞遺伝学的異常は、MDS 患者に発生し、AML への転化に関連することが知られています。このようなクローンが存在する場合、全血球数検査と骨髄のモニタリングをより頻繁に行う必要があります。
骨髄不全に対する治療選択
輸血依存や中重度の血球数値など、重度の骨髄不全が持続する患者には、治療が推奨されます。免疫抑制療法は、有効性が実証されていないため、TBD関連骨髄不全症には推奨されません。後天性再生不良性貧血とは対照的に、TBD患者は骨髄不全の免疫病態というよりむしろ遺伝的病態を有しており、免疫抑制療法に反応しないようです [9]。TBD関連骨髄不全症の治療法には、造血細胞移植またはアンドロゲン投与があります。
造血幹細胞移植(HCT)
HCTは、TBD患者の骨髄不全症または他の血液学的合併症(MDS、白血病)に対する唯一の治癒的治療法であり、重度の疾患を持つ移植適応患者において選択される治療法と考えられています。理想的なドナーは、身体検査、諸々の生化学検査、遺伝子突然変異検査、テロメア長測定によってTBDでないことが証明された、適合した血縁ドナーのみです。完全に一致した血縁ドナーがいない場合は、非血縁ドナーや半合致ドナー(ハプロドナー)や臍帯血バンクドナーからのHCTが検討されることがあります。しかし、HCT 後の TBD 患者では、特に肺の毒性に関連して、長期予後不良が観察されています。HCT は 骨髄不全症 や MDS/AML は治癒させますが、TBD に見られる他の臓器機能障害には対処できません。HCT については、第 13 章の造血幹細胞移植で詳しく説明します。
アンドロゲン(男性ホルモン)
アンドロゲンは同化ステロイドで、後天性BMFの治療やファンコニー貧血など、50年以上にわたって様々な症状に使用されてきました。TBDにおけるアンドロゲン使用に関連した文献は、様々な結果を示していますが、概ねアンドロゲン治療は、血球数、特にヘモグロビンを改善する合理的な選択であることを示唆しています。重度の血液疾患を持つ患者(最重症再生不良性貧血)は、通常HCTを受けますが、医学的に適格でない場合(多臓器疾患を併発している場合)や適切なドナーがいない場合はHCTを受けられないことがあります。加えて、アンドロゲンは、中等度または重度の単系統細胞減少症の患者にとって血球数増加をもたらす良い選択肢となるかもしれません。TBD患者の多くは、ヘモグロビン、血小板、好中球数の持続的な改善を伴い、アンドロゲンに造血反応を示します。しかし、アンドロゲンには副作用があり、TBDの患者は特にアンドロゲンの影響に敏感なようです。
アンドロゲンで報告される最も一般的な副作用は、次のとおりです。
・顔や陰部の多毛、頭皮の脱毛、陰茎/クリトリスの拡大、声の変化およびにきびを伴う男性化(または女性や子供で男性化)。
・行動変化(例:攻撃性、気分の落ち込み)
・肝毒性(トランスアミナーゼおよび/またはビリルビンの増加)
・血液中の脂質組成が変化し、HDLが異常に低く、LDLが異常に高くなる。
・小児の成長期における成長板の早期閉鎖と成人後低身長の原因となることがある。 ・肝臓腺腫、脾臓および/または肝臓紫斑病(血餅)、まれに肝細胞癌。
アンドロゲン治療開始前に、全血球数の基本値、肝パネル、肝臓と脾臓の超音波検査、脂質データ値、甲状腺機能、骨年齢のためのX線(成長期の子供の場合)を取得する必要があります。治療開始後は、一定の用量で2~3ヶ月間、血液学的な改善を観察しながら試用することです。血球数が安定した後、患者の副作用に応じて、血球数の安定を維持するために必要な最低有効量まで、次の数ヶ月間(2~4ヶ月または6ヶ月間)アンドロゲン投与量を徐々に減少させることができます。綿密な医学的管理と投与量の調節は、最小限の副作用で最小限の有効量を達成するのに役立ちます。
ダナゾールは、TBD関連骨髄不全症の治療に使用される合成アンドロゲン誘導体です。ダナゾールを800mg(50kg未満の小児では16mg/kg)使用したある臨床試験では、3ヶ月および6ヶ月の治療後にそれぞれ79%および83%の血液学的反応が見られました。患者の大半は TERT/TERC 変異型を有しており、その他の TBD 関連変異型は 4 例(DKC1 3 例、RTEL1 ヘテロ接合型 1 例)、変異型が特定されないものは 6 例のみでした。頻度の高い副作用は、肝酵素の上昇(41%)、筋痙攣(33%)、浮腫(26%)、脂質異常(26%)でした。登録患者1名に肝血管腫が発生し、治療の中止を余儀なくされました[10]。他の症例対照研究や症例検討例でも、ファンコニー貧血やTBD/DCの患者におけるダナゾールの血液学的有効性が、重篤な副作用なしに証明されています[11-13]。
オキシメトロンやナンドロロンなどの他のアンドロゲンも、TBD関連の骨髄不全症に使用されています。オキシメトロンは、しばしば女性の男性化が起こり、その使用を制限することがあります。TBDの患者は、アンドロゲンの効果に対してより敏感である可能性があるため、TBDでは一般的にファンコニー貧血の患者よりも低い用量が推奨されています。長期コホート研究(n=16)に登録され、アンドロゲン(オキシメトロン[n=14]、ナンドロロン[n=1]、フルオキシメステロン[n=1])の投与を受けた患者の解析によると、全体の血液学的奏効率は69%で、患者の大多数がDKC1、TINF2、RTEL1の変異体でした (2 常染色体劣性、2常染色体優性) [14]
ダナゾールは、TBD 患者のテロメア短縮を抑える可能性があります。見込み臨床試験において、ダナゾールの投与6ヶ月目の16/21人(76%)、24ヶ月目の11/12人(92%)の患者は、個々の基本値よりテロメア長が伸長しました[10]。注目すべきは、この最初の解析は、リンパ球と顆粒球を合わせたテロメア長を測定するためにqPCRを用いて行われましたが、現在はリンパ球サブセットを用いたフローFISHが標準方法と考えられていることです。その後、フローFISHで測定されたリンパ球を用いて、TBD患者のアンドロゲン治療に着目した2つの症例対照研究が報告されています。一つ目の、アンドロゲン治療を受けた10人の患者とアンドロゲン治療を受けなかった16人の患者のテロメア長を経時的に比較した研究では、2つのグループ間でテロメアの減少に差がないことが示されました[15]。二つ目の、TBD患者7人を対象とした研究では、フローFISHにより、全患者でリンパ球のテロメア長が改善されたことが示されました。二つ目のテロメア伸長を示した研究では、TERT/TERC変異体を持つアンドロゲン治療患者が多い傾向にあったため、不一致の結果は、それぞれの研究における遺伝子変異の種類の違いに関連している可能性があります [13]。
アンドロゲン療法に関する注意点
1.アンドロゲン治療は骨髄不全を治すものではありませんが、治療期間中、持続的に血球数を増加させることができます。患者さんによっては、これが数年(例えば、10~15年、あるいはそれ以上)に及ぶこともあります。
2.血球数は、一般的にアンドロゲン治療で正常値に達することはありませんが、以前は輸血に依存していた患者が、赤血球や血小板の輸血サポートを必要としない程度に改善することがあります。
3.アンドロゲンは、骨髄予備能が著しく低下している患者よりも、ある程度骨髄予備能がある患者において、より効果的であると思われます。アンドロゲン治療を受けている患者は、骨髄の造血細胞量が枯渇すると、時間とともに難治性になる可能性があります。
4.アンドロゲンは、MDSやAMLへの進行を防いだり遅らせたりしませんし、進行を促進する証拠もありません。
最長6ヶ月の試験を行っても治療効果が見られない患者さんでは、アンドロゲンを中止する必要があります。時々、最初のアンドロゲンに反応しなかった患者が、その後別のアンドロゲンに反応することがあります。
アンドロゲンの副作用のモニタリング
アンドロゲン治療を受けている患者は、治療を受けている間、基本数値の臨床検査評価と定期的なフォローアップを受ける必要があります。十分な投与を行ってもアンドロゲン治療に対する反応が見られない患者さんや、アンドロゲン治療が不応となった患者さんは、造血細胞移植を検討することができます。現在のところ、アンドロゲン治療が将来の幹細胞移植関連合併症のリスクを増加させるという証拠はありません。
その他の治療方法
・プレドニゾン:プレドニゾン(5mg/日または隔日)とアンドロゲンの併用は、過去に骨端(成長板)の早期閉鎖を遅らせるために使用されていました。この使用は、有益な効果を支持するデータがなく、プレドニゾンが血管壊死と早期の骨量減少(骨減少症/骨粗鬆症)を引き起こす可能性があるため、もはや推奨されていません。
・サイトカイン:G-CSFやGM-CSFなどの造血成長因子は、好中球数を一時的に改善させることができ、再発性または重症感染症の存在する持続性好中球減少症(好中球数<500/mm3)の患者には有用であると考えてられます。しかし、成長因子の使用は、既存のクローンの増殖や悪性転換を刺激する可能性があるという理論的な懸念があります。G-CSFがアンドロゲンと併用された場合、脾臓紫斑病および脾臓破裂が観察されています[16]。したがって、G-CSFまたはGM-CSFは、TBD患者においてアンドロゲンとの併用は推奨されません。
・エルトロンボパグ:TBDにおけるエルトロンボパグの使用に関するデータは、ほとんどありません。重症再生不良性貧血患者にエルトロンボパグを使用したフランスの研究では、2人が後にTBDであることがわかり、どちらもエルトロンボパグが効きませんでした[17]。軽・中等度再生不良性貧血患者にエルトロンボパグを使用したNIHの臨床試験では、1人のTBD患者が含まれており、エルトロンボパグ反応患者と判断されました18]。現在までのエビデンスの欠如を考慮すると、エルトロンボパグはTBD患者に対する治験薬として位置づけられ、臨床試験の設定で投与されるべきです。
・治験実施計画:造血細胞移植 の候補者でなく、更にアンドロゲン治療に反応しない患者には、治験プロトコルが検討され るかもしれません。
骨髄不全症の管理基準
TBDの臨床管理は、程度の差こそあれ、複数のシステムが同時に影響を受け、表現型が患者によって大きく異なるため、複雑です。
ある患者に有効な治療法が、他の患者にとって理想的であるとは限りません。したがって、利用可能な治療法のリスクとベネフィットは、TBD患者のケアに精通した血液専門医と相談する必要があります。
骨髄不全の治療に対する一般的なアプローチを以下に概説します。
TBD診断時
・患者は、血液専門医による評価とフォローアップを受け、医学的な監視と管理を受ける必要があります。他のシステムの関与の程度を評価するために、すべてのシステムの詳細な評価(TBD ガイドラインに従っ て)を行う必要があります。TBD の専門家である血液専門医に相談する必要がある。
・細胞減少の程度にかかわらず、細胞減少が進行して治療が必要となった場合に備えて、骨髄不全の治療法について検討する必要があります。TBD患者の移植に精通したHCTチームとの早期の話し合いが考慮されます。TBDの家族のHLA型および遺伝子変異検査は、HCTドナーの可能性を評価し、罹患した家族をドナーとして除外するために考慮されるべきです。
・家族には適切な医療カウンセリングを行うよう紹介すべきです。着床前遺伝子診断(PGD)及び患者のための非罹患胚(HLA適合者)の選択も考慮されます。
血球数が正常、または軽度〜中等度骨髄不全の場合
・さらなる治療が必要になるまで、前述のように 全血球数検査 と骨髄検査を行います(BMF のモニターを参照)。
・治療法の選択肢について話し合いを続けます。骨髄数が減少している患者については、まだ行われていなければ、造血幹細胞移植チームへの紹介を検討します。しかし、重度の骨髄不全または MDS/AML が発症するまで HCT を行う必要はありません。
・ドナーは、最も好ましくは HLA 一致の同胞(テロメア変異陰性が証明されている)であるが、必要に応じ て一致した非血縁ドナーまたは代替ドナーを考慮する必要があります。
・臨床的に重大な細胞減少を伴う患者には、アンドロゲン療法を考慮する。
高度骨髄不全の場合
・適格な患者には、HCTを検討します。
・適切なドナーがいない、医学的に不適格、高リスクを伴う患者、またはHCTを受ける意思がないためにHCTの候補でない患者に対して、アンドロゲン治療を開始します。
アンドロゲンに反応しない重度の骨髄不全、および移植のリスクが高い場合
・サイトカイン、支持療法、または試験的プロトコルを検討する。
MDS or AML
TBD患者におけるMDSの診断は、これらの疾患に精通した血液病理医が確認する必要があります。TBDに合併したMDSまたはAMLに対して、HCT以外の標準的な有効な治療法は確立されていません。
・導入化学療法の有無にかかわらず、患者を HCT に紹介する必要があります。
・HCT に不適格な患者には、第 I/II 相試験を検討することがあります。
このトピックに関する詳細な情報は、第13章造血幹細胞移植を参照してください。
支持療法
TBD患者の中には、最終的な治療を開始する前、治療が有効になる前、または他の治療が失敗した場合に、赤血球および/または血小板の輸血が必要な場合があります。輸血依存症になった患者には、造血幹細胞移植を考慮した移植センターへの適時紹介が必要です。
貧血:赤血球輸血は、避けられない場合もあり、すぐに悪影響が出ることはほとんどありません。しかし、慢性的な赤血球輸血は、移植の結果に悪影響を及ぼす可能性がある。
多くの赤血球輸血を受けている患者は、少なくとも血清フェリチンによって鉄過剰症を監視する必要があります。臓器障害が疑われる場合は、心臓および肝臓の T2* MRI または他の適切な検査を実施する必要があります。鉄過剰症が認められる場合は、デフェロキサミン(デスフェラル)またはデフェラシロクス(エクスジェイド)等の鉄キレート剤による適切な治療を開始することです。
血小板減少症:重度の血小板減少症の患者、侵襲的な処置を受けている患者、粘膜出血のある患者には血小板輸血が適応となることがあります。粘膜出血のある患者には、アミカール又はトラネキサム酸を血小板輸血の補助として使用することができます。
血小板数50×109/L未満の患者では、非ステロイド性抗炎症薬、アスピリン及び血小板機能を阻害する他の薬剤は避けるべきです。
血小板数50×109/L未満の患者では、外傷のリスクの高い活動(例:コンタクトスポーツ)は避けるべきです。
好中球減少症:G-CSFは、重度の好中球減少症および感染症を併発している患者で検討されることがあります。G-CSFは、脾臓紫斑症とその脾臓破裂のリスクが高いため、アンドロゲンを使用している患者には使用すべきではありません。
進行中の臨床研究
TBDの患者さんにおけるアンドロゲンの使用について、さらなる研究が進められています。研究目的は、ダナゾールの低用量使用、肝臓や肺の線維化などテロメア疾患の他の臓器機能不全に対するダナゾールの使用評価、ダナゾールと他のアンドロゲンのテロメア長に対する経時的効果の評価などです。
また、強度を下げた移植前処理を用いて、HCT後の毒性を軽減する方法を検討する研究も現在進行中で、より良好な長期転帰をもたらす可能性があります。さらに、TBD患者に対する遺伝子治療も現在研究中です。
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